【気象学のすすめ】大気の運動

気象予報士資格

コリオリ力

 ニュートンの運動の第2法則は絶対座標系(宇宙空間に固定された座標系)について成り立つ法則である. ところが我々は回転している地球の表面, すなわち回転座標系に乗って大気の運動を測定している.

 したがって, 我々にとって完全に無風な状態であっても, 絶対座標系から見れば大気は地球と共に回転している. つまり加速度を持っている.

 この理由により, 地球に相対的な大気の運動を記述するためには, 運動の第2法則を表す運動方程式(位置の2回微分の形)を回転座標系上での式に変形して使った方が便利である.

地球の回転の影響を単純化して考えるために, 図のような絶対座標系\((X, Y)\)に対し, 原点\(O\)のまわりを一定の角速度\(\omega\)で回転する回転座標系\((x, y)\)を考える.

 それぞれの座標系における質点\(P\)の位置\((X, Y)\)と\((x, y)\)の関係は, 次式となる.

座標系の関係1

\[x = X\cos{\omega t} + Y\sin{\omega t} \]
\[y = -X\sin{\omega t} + Y\cos{\omega t}\]

 これらを時間で微分すると, 次式が得られる.

座標系の関係2

\[\frac{dx}{dt} = \frac{dX}{dt}\cos{\omega t} + \frac{dY}{dt}\sin{\omega t} +\omega(-X\sin{\omega t}+Y\cos{\omega t}) \]
\[\frac{dy}{dt} = -\frac{dX}{dt}\sin{\omega t} + \frac{dY}{dt}\cos{\omega t} -\omega(X\cos{\omega t}+Y\sin{\omega t}) \]

 これらを再度微分し, 整理すると, 次式が得られる.

座標系の関係3

\[\frac{d^2x}{dt^2} = \frac{d^2X}{dt^2}\cos{\omega t} + \frac{d^2Y}{dt^2}\sin{\omega t} +\omega\left(-\frac{dX}{dt}\sin{\omega t} + \frac{dY}{dt}\cos{\omega t}\right) + \omega \frac{dy}{dt}\]
\[\frac{d^2y}{dt^2} = -\frac{d^2X}{dt^2}\sin{\omega t} + \frac{dY^2}{dt^2}\cos{\omega t} -\omega\left(\frac{dX}{dt}\cos{\omega t} + \frac{dY}{dt}\sin{\omega t}\right) – \omega \frac{dx}{dt}\]

 両座標系での外力\(\boldsymbol{F}\)の成分\((F_X, F_Y)\)と\((F_x, F_y)\)との関係は次式で書ける.

座標系の関係4

\[F_x = F_X\cos{\omega t} + F_Y\sin{\omega t} \]
\[F_y = -F_X\sin{\omega t} + F_Y\cos{\omega t}\]

 以上, 座標系の関係1~4から次式が得られる.

回転座標系の運動方程式

\[\frac{d^2x}{dt^2} = \frac{F_x}{\rho} +2\omega v + {\omega}^2x \]
\[\frac{d^2y}{dt^2} = \frac{F_y}{\rho} -2\omega u + {\omega}^2y \]

 回転座標系で得られた運動方程式(回転座標系の運動方程式)を絶対座標系の運動方程式(運動方程式:位置の2回微分)と比較すると, 右辺に付加的な項が2つ現れることがわかる.

 第2項がコリオリ力と呼ばれる力である. 第3項は回転軸からの距離と角速度の2乗に比例し外側に向く力であるので, これは遠心力である.

 コリオリ力を\(\boldsymbol{F}_c=(2\omega v, -2\omega u)\)とおけば, その大きさは次式である.

コリオリ力の大きさ

\[|\boldsymbol{F}_c|=2\omega\sqrt{u^2+v^2}=2\omega|\boldsymbol{V}|
\]

 コリオリ力は, 風速に比例する. また\(\omega\)が正(時計回り, 北半球に相当)ならば, その力の向きは風速ベクトル\(\boldsymbol{V}\)に対し, 直角右向きである.

以上, 平面の回転座標系でのコリオリ力を考えたが, 実際の地球は球面である. そこで次に, 図に示すように地球上の緯度\(\phi\)の地点\(P\)に置かれた直交直線座標を考える.

\(P\)点での鉛直方向(\(z\)方向)の角速度成分は図より, \(\omega=\Omega \sin{\phi}\)となる.
\(\Omega\)は地球の回転角速度で\(7.29 \times 10^{-5}\mathrm{[rad/s]}\)である.

\(P\)点におけるコリオリ力は, コリオリ係数\(f=2\Omega \sin{\phi}\)を用いると, 次式となる.

コリオリ力

\[\boldsymbol{F}_c = (fv, -fu)\]