気圧傾度力
前節では, 回転座標系での運動方程式を導き出し, コリオリ力と遠心力という2つのみかけの力が働くことが示された.
本節では, 空気塊に実際に働く力\(\boldsymbol{F}\)について考えてみる.
大気中では, 隣り合う空気塊が互いに圧力を及ぼしあっている. ただし, 空気塊の運動を引き起こす力は圧力そのものではなく, 空間的な圧力差である. この圧力差から生じる力を気圧傾度力という.
天気図上には低気圧や高気圧が描かれているが, 低気圧と高気圧の間にある空気塊には常にこの力が作用し, 低気圧の力へと押されている.
この力をもう少し詳しくみるために, 図のような直方体の空気塊に働く力について考えてみる. 簡単化のため, \(x\)方向についてだけ考え, 空気塊の各側面に働く圧力をそれぞれ\(p_1\)および\(p_2\)とする.
各側面に働く力はそれぞれ, \(p_2\Delta y\Delta z\)および\(-p_1\Delta y\Delta z\)となるので, これを運動方程式に代入すると, 次式となる.
\[m\frac{du}{dt} = -(p_1-p_2)\Delta y\Delta z\]
今, 質量\(m\)は密度と体積の積\(\rho\Delta x\Delta y\Delta z\)に等しいので, これを気圧傾度力の運動方程式1に代入すると, 次式となる. ただし, \(\Delta p = p_1-p_2\)である.
\[\rho\Delta x\Delta y\Delta z\frac{du}{dt} = -\Delta p\Delta y\Delta z\]
\(\Delta x\to0\)とすれば次式の関係が得られる.
\[\frac{du}{dt} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial x}\]
\(y\)方向についても同様に, 次式となる.
\[\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial y}\]
すなわちベクトルで書けば気圧傾度力\(\boldsymbol{F}_p\)は, 次式で表される.
\[\boldsymbol{F}_p = \left(-\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial x}, -\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial y}\right)\]